感覚派アスレティックトレーナー  身体と会話する日々
マッサージ師、鍼師であり、アスレティックトレーナーでもあるフィジカル系職人が、身体について、スポーツについて、その他よしなし事について綴る、教養系?ブログ
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世界陸上競技選手権テグ2011 第8日&最終日(9/3・4)の感想
大会第8日(9月3日)でもっとも大きなニュースは、
何と言っても男子50km競歩決勝で、
森岡紘一朗選手が6位入賞したことであろう。
その上、谷井孝行選手9位、荒井広宙選手10位も
入賞に迫る結果であり、
日本人3選手すべてが成功レースだった(と言って良いであろう)こと。
これは、優勝と準優勝選手を出したロシアや
3位と5位のオーストラリアなどと並び、
国別の成績としても素晴らしく、
日本競歩界の強化の成功と言えるであろう。
(ルール通り歩いているという意味では、
 両国を上回っていると言えそうだ。)

日本選手の技術は、世界的にも高いのではないだろうか?
特に、森岡選手の技術は世界最高水準にあると思う。
競歩ではルール上、
両足が地面から離れてはいけないことになっている

しかし、スーパースローの映像を見た方もいると思うが、
実際には今の競歩では
両足が地面から離れていない選手はいない(であろう)。
速過ぎて肉眼では判断しにくいから、
(良く解釈すれば)失格者が限られているだけである。
歩型が良ければ警告を受けにくいということは言えるようである。

優勝したロシア選手は、
実際には両足がかなり浮いていた。
(3位の選手も。また女子20kmの1位、3位の選手も。)
スピードが上がる程両足が地面から高く離れる傾向があるようで
ペースアップして競り合っている時や
上位入賞者には両足が地面から浮く度合いが大きかった。
その入賞者の中で、
森岡選手の両足の浮き具合は最も小さかった。
恐らく、両足が浮いている時間は
他の選手の1/3くらいしかなかったであろう。
(以上、各選手の両足の浮き具合は、
 スロー再生で何度も確認した上で書いている。)


女子100mハードルに優勝した
サリー・ピアソン選手(オーストラリア)は、
その技術の高さと予選からの積極的な走りが
大きく印象に残った。

男子1500m決勝は、
準決勝で素晴らしいラスト1周のスパートを見せたバアラ選手(フランス)が
決勝では思いの外生彩がなかったのが残念。
このレースも、ケニア勢の強さが目立ったレースだった。

男子200m決勝でのウサイン・ボルト選手の優勝タイムは、
僕の予想を大きく上回った。
”遅いトラック”かと疑いを持っていたが、
勘違いだったのだろうか?
フランスルメートル選手の19秒代突入しての銅メダルは、
見事であるのはもちろん、
日本人(非黒人)選手にも希望を与えてくれたのではないか。
(かつてイタリアに、メンネアという名選手がいたこともあるが。)


最終日(9月4日)、
4×100mリレー日本が男女共に、
バトンパスの面で上手くいっていなかったことが残念。

男子三段跳では、
テイラー選手(アメリカ)が素晴らしい記録(17m96)で優勝したが、
2位のイドウ選手(イギリス)と3位のクレイ選手(アメリカ)も、
上手に着地できていればもっと良い記録が出たはずである。
イドウ選手は上体が前に突っ込むので
重心位置よりも着地地点が手前になって損をしているし、
クレイ選手も4回目のジャンプでは
右手を両足や身体よりもずいぶんと手前に着けてしまい、
恐らく40cm位は記録を損したのではないだろうか?

女子800m決勝は、
準決勝後の予想が当たり、ちょっと嬉しい。
優勝したロシアサビノワ選手は、
1周目をややペースを押さえて後方に位置していたが、
恐らく57秒2~3で回っている。
ゴールタイムが1分55秒87なので、
2周目を58秒5程度で走っている。
前後半の400mのタイム差が約1秒3というのは、
あの展開の中では理想的なペース配分と言える。
また、後半400mを58秒5で走るのは
女子としては素晴らしい力であるし、
なおかつラスト100mでのスピードを持っている。
やはりレース巧者であるし、
真の実力者である。

ケニア
ジェプコスゲイ・ブジェネイ選手は、
2周目が60秒57もかかった計算で、
前後半の400mのタイム差が4秒87もある。
これでは、いくら潜在能力があっても
中距離(800m)レースでは勝てない。
中距離は、頭を使った者が勝つ種目でもある。

男子4×100mリレー決勝は、
ジャマイカアサファ・パウエル抜きで世界新記録で優勝した。
この種目は、しばらくはアメリカよりもジャマイカ
優位に立ち続けるのだろうか?
アメリカが第3走者の転倒で脱落、
その上にそれに巻き込まれたトリニダード・トバゴ
せっかく3番手だったのに大きく遅れてしまった。
4×100mリレーは、
どうにも無事に終わりにくくなって、
波乱のおき易い種目になっている。

アメリカの第3走者が転んでしまったのは、
イギリスのアンカーと接触したからであるが、
昔と比べて選手が大型化(縦にも横にも)しているので、
1m20cmというレーンの幅はもう狭いのかもしれない

男子110mハードル決勝で、
劉翔選手(中国)の左腕と
ロブレス選手(キューバ)の右手がぶつかったのも、
両者の身体の大きさと腕の長さが大きな原因の一つであろう。


ともあれ、一人ひとりの人間の感情などに関係なく、
残酷なまでな結果が起きるのがスポーツであるが、
また一人の人間(選手)の思いが劇的なくらいに結実するというのも
リアルなスポーツの世界であるから面白い。
今回の世界陸上も、
世界一を決める戦いはまことにリアルで厳しく、
かくも美しいことを見せてくれたのであった。
(中継テレビ局の不誠実でお粗末な編集・
 実況・タレント起用・緊張感のないおしゃべりに
 邪魔されたにも関わらず。)




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世界陸上競技選手権テグ2011 第7日(9/2)の感想
この日、いや本大会(まだ終わっていないが)の最高の戦いは、
女子やり投げ決勝であろう。

世界記録保持者チェコシュポタコバ
1投目から68m80という好記録でリードする。

ロシアアバクモワは右足にテーピングをしていて
怪我をしていることがうかがわれ、
予選の2投と決勝の1投目と投てきに生彩がない。
ところがアバクモワの2投目は、
全身をしっかりと使った見違えるような投てきで、
71m25という世界記録に迫る記録で逆転!
この1投で優勝が決したかと思われた。

ところが、ベスト8に入ってからの5投目。
シュポタコバの渾身の1投は、
71m58という大投てきでアバクモワを逆転!
怪我を抱えるアバクモワには、もう逆転は不可能ではないかと思われた。

アバクモワは、北京オリンピックでも、70m78を投げたのに、
71m42を投げたシュポタコバに敗れている。
70mを投げて負けるということはまず起こりえないことである。
不運と言って良いだろう。
それが、今度は71mを投げて敗れようとしている。
こんなことは史上初であろう。

ところが、アバクモワシュポタコバの大逆転の投てき直後の5投目、
71m99を投げて再々逆転してしまったのである。
狂喜するアバクモワ
これにはシュポタコバも、呆れたように力なく笑うしかない。

さすがに6投目は両者共に記録は伸びず、
世紀の名勝負は、アバクモワの勝利に終わった。
 
 アバクモワの投てき:TBSサイトより
 シュポタコバの投てき:TBSサイトより

両者の執念、集中力、技術の高さに、拍手を送ろう。


女子200m決勝は、ジャマイカベロニカ・キャンベル=ブラウンが、
オリンピック王者(2連覇)の意地を見せて優勝した。
 女子200m決勝の映像:TBSサイトより

世界陸上4連覇を目指したアリソン・フェリックス(米)は、
走りに冴えが無く3位に終わった。
手足が長くスマートな体型と伸びやかな走りは、
ロングスプリントの素質をうかがわせてきたが、
彼女のスプリントフォームは、
現代の走理論から言えば時代遅れ。
25歳になるのにフォームを改良してこなかったのが残念である。

2位に入ったカルメリタ・ジーターは、
100mでは素晴らしいスプリントフォームで優勝したが、
200mは彼女にとって長かったようだ。
直線に入ってからベロニカ・キャンベル=ブラウンに迫ったが
直線の後半ではスピードが鈍ってしまい、
逆に直線で一旦力を温存したベロニカ・キャンベル=ブラウン
最後にまた突き放しに掛かるとジーターは離されてしまった。
200mの走り方を熟知しているベロニカ・キャンベル=ブラウン
執念の勝利だった。

とにかく、今回の200m決勝は、
ベロニカ・キャンベル=ブラウンが総てに於いて勝っていた。


女子800m準決勝で、
またもや解説者が中距離レースについて無知であることを露呈した。

第2組で、ケニアジァネス・ジェプコスゲイ=ブジェネイが1周目をぶっ飛ばし、
56秒53というラップで回った。
これは明らかに速すぎる。
その証拠に、ゴールタイムはトップが 1分58秒45であるから、
2周目は61秒92掛かっていることになる。
実際には、トップのサビノワ(ロシア)は1周目は最後尾にいたので、
1秒くらいジェプコスゲイよりもラップが遅いとみれば、
2周目は61秒程度であろう。

前後半のバランスが一番良いサビノワでさえ、
1周目と2周目のラップの差が3秒5程あると言うのは、
これは前半飛ばし過ぎの典型的なレースである。
こういうレースをするとレース後の疲労が大きくなる。
イーブンまたは後半少し速いぐらいのレースをした方が、
エネルギー節約になる。
こうしたことを、解説者が指摘しない(できない)。

恐らくサビノワは、ジェプコスゲイが前半から飛ばしてくることを読み、
自分は出来るだけ省エネレースをしようと
スタートからゆっくりと走り、
1周目に追いつけば良いというレース展開。
セオリー通りバックストレートで順位を徐々に上げ、
第3コーナーまでにスパート勝負し易い位置に付け
直線でスパート勝負で勝つ。
これは確たる読みと作戦に基づいた素晴らしいレースの実行である。
(思ったとおりに実行できるだけの経験と自信がある証拠)            ※1

それなのに、解説者は1周目の第3・第4コーナーの間のタイミングでは
「二人もう離してしまった」(二人が遅れた)とコメントしている。        ※2
さらに、2周目の第3コーナー前では先行していたクロコワ選手(スロバキア)を
サビノワと勘違いし、
アナウンサーの発言をわざわざ訂正しているが、
間違っているのは解説者の方。
ユニフォームは似ているが、髪の色が全然違うのだから、
そんな間違いはして欲しくない。
総てに”見たこと”よりも”紙の上の知識”を優先し
頭の中が予断に満ちているから間違いを犯すという好例。

 女子800m準決勝第2組のレース:TBSサイトより

この女子800mの準決勝の第3組では、
南アフリカセメンヤ選手がやはり1周目を後方につけて走った。
スパートに自信があるのだろう。
この組だけは1周目よりも2周目が速い、
ネガティブ・スプリットのレースであった。
セメンヤは2周目が58秒5を切っており、
ロシアコステツカヤ選手が59秒ちょっとで走っている。
途中で書いたように、
このようなレースでは疲労度が低くて済む。

 女子800m準決勝第3組のレース:TBSサイトより

決勝では、ロシア勢とセメンヤの優勝争いになると思うが、
セメンヤのスパートは切れがあるという風には感じないので、
レース巧者のサビノワ選手が優勝するような気がしている。


※1 思ったとおりに実行できるだけの経験と自信がある

いくら集団に付いていくと速すぎるとわかっていても、
集団から離れて独自のペースで走るということは、
不安なども心をよぎり実際には難しい。
実力と経験と勇気と決断力があるということ。
また、バックストレートまで最後尾で走っているが、
ハイペースに付いていけなくなってスピードが鈍るのは、
バックスストレートからが多い。
その時点で集団に入っていると、
そのスピードの鈍った選手が自分の進路の邪魔になるので、
直線まで最後尾にいて遅れる選手を外側から抜いていく方が
安全で確実である。
そうしても先頭の選手達もスピードが落ちてくるので、
充分残り100mまでに追いつけると読んでいたのであろう。



※2 「二人もう離してしまった」

二人とは、サビノワとジャクソン(イギリス)のこと。
離れてしまったのではなく、
明らかに飛ばし過ぎを避けて
後半勝負のために後ろから追う作戦である。
それでも、ジャクソンにとってはまだハイペース過ぎて
5位に終わっているが、
記録は彼女のプライベートベストが出ている。
(※2は9月5日に書き加えた。)




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大阪国際女子マラソンの解説
昨日(1/30)行なわれた大阪国際女子マラソン
赤羽有紀子選手が過酷な気象条件の中、
強さを見せつけて優勝した。

確か、気温が6℃を下回ると身体が冷えてしまい、
マラソンには寒すぎる悪条件となる

(日本陸上競技連盟の研究によるリポートを専門誌で見た記憶がある)
その上に強い風が吹いていたので、
女子選手にはなおさら条件が厳しかった思う。
そのような気象条件の中での
2時間26分をわずかに超えるタイムと言うのは、
気温10℃前後、無風の条件と比べれば、
恐らく3~4分は損をしているであろう。
世界選手権代表の最有力候補といっていいであろう。

2位に入った伊藤舞選手も奔放なフォームと積極的な走りで
赤羽選手と最後まで競り合って26分台で走ったことは、
陸連も大いに評価すべきである。


ところで、このエントリーの主題は、
今大会のテレビ解説の方である。
大塚製薬監督の河野?氏の解説は、
他の数多いる長距離・マラソン解説者の中で群を抜いて素晴らしかった。
さすがに理論的である。
元選手と言うだけの解説者には、
もともと理論を語る知識も無いので問題外だが、                 ※1
元とか現監督・コーチという肩書きがあっても、
結構科学的な根拠や正確な知識に基づいていない
”適当”なことも語っていることが少なくない。

良い記録を出したり良い成績を収めるようになると
解説者はその選手を無批判に褒めたりする。
しかし、今回の河野氏は、
赤羽選手のそれまでの欠点(疲れてきた時に腰が落ちる/体幹の強化が必要)を
はっきりと指摘し、
今回赤羽選手がそうした欠点を改善してきていることを
レースの後半の早い段階で言及して、
赤羽選手有利を予想していた。                         ※2

また、自チームの選手である伊藤舞選手について、
上に飛び上がっている(跳ねる)フォームに見えるが、
じつは着地時にすぐに脚に腰(重心)が乗っているので
飛び上がっているのではなく前に進むフォームである
という意味のコメントをしていたが、
まったくそのとおりであると思う。
やたらと上に飛んではいけないとか、
地面を這うようなピッチ走法がいいとか、
一方的な狭い考えがあたかも真実であるかのようなマラソン解説を聞くが、     ※3
ランニングフォームはもっと様々な要素で成り立っているので、
多面的に分析をして評価しなければいけない
し、
解説もそうでなければいけないであろう。

その他のコメントも冷静でわかりやすかったし、
一つ一つが理にかなっていた。
その理由として、本人の性格や立場があるだろうが、               ※4
筑波大学卒と言うことで競技だけでなく勉強にも励んだことが
今も学び続ける意欲に結びついているのではないかと
勝手に想像している。
私がトレーナーとして合宿で河野氏とご一緒した時に、
きちんと書物(学会誌)で勉強されていることを伺わせる出来事があった。
他人から話を聞いて勉強したつもりになる人もいるが、
その出典は何か、根拠はどこに示されているのか、
きちんと自分で直接書物・論文等に当たって調べないと
本当に勉強したことにはならない


とにかく、河野氏の解説は理論的でわかりやすかった。
数多いるスポーツ解説者には、
こうした河野氏の態度を見習って欲しいし、
そうした能力を持って初めて解説を引き受けてもらいたいと思う。



※1 元選手と言うだけの解説者には、もともと理論を語る知識も無い

だから無用と言うわけではない。
理論や科学的な知識など無いのだから、
選手心理など選手の目線で語ることに
元選手の解説者の存在意義がある。
そして、選手にも様々な個性の選手がいるから、
自分の見方や感じ方は一般化できないことも自覚して
誤解を招かない(狭い見方に偏らせない)ように語るべきである。


※2 (河野Ⅷ氏は)レースの中盤過ぎに、赤羽選手有利を予想

結果論でモノを語るのではなく、
感覚(何となく)で予想するのでもなく、
しっかりとした、しかもわかりやすい観点に基づいて説明していること、
これこそ専門家の解説といえるものであろう。


※3 一方的な狭い考えがあたかも真実であるかのようなマラソン解説

日本に蔓延しているこうした狭い考え方では、
エチオピアやケニアの選手が何故速いのかを説明できないであろう。
これらの国の選手は”別次元”と考え、
日本人とは根本的に違うと思考停止していたら、
日本人は長距離・マラソンの分野でも世界から取り残されてしまうであろう。
(もう男子は取り残されているけど。)

上に飛んでいるようでも着地時につぶれないで高い腰の位置を保てるのと、
上には飛ばないけど着地時に膝や股関節が大きく曲がって(潰れて)
実は接地時の重心の上下動が大きいのとでは、
どちらの方がランニング効率がいいだろうか?
上に飛んだかどうか、ストライドが広いかどうかだけを問題にするのは
全くのナンセンスである。


※4 (河野Ⅷ氏の)立場

大塚製薬陸上競技部監督
日本陸上競技連盟長距離・ロード特別対策委員会副委員長)



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指導者の声かけ 褒めること
今日、久しぶりに近所の陸上競技場に立ち寄った。

その競技場では、週末には良く
中高生の陸上部員が練習している。
お昼食を食べた後なので、
時間的にはもう誰もいないかもしれないとは思っていたのだが、、。
私の大学陸上部の後輩が指導する、
ある中学高校一貫校の陸上部員達が練習していた。

私の後輩である顧問教師()先生は、
フィールド内の芝生の上で、
何やら一人の生徒の脚をマッサージしているようだった。
そこで、会話が始まったのだが、
たった一人で指導しているので、
生徒が次々と顧問である先生のもとにやってくる。
また、生徒のマッサージを終えた先生は、
今度はトラックを周回する生徒達に
ストップウォッチのタイムを読み上げてやったり、
違う練習をしているグループの生徒に声をかけたりと、
常に何かしら指導をしているから、
私との会話も途切れ途切れになる。

ふと気付くと、
トラックを何周か周回している女子生徒達(おそらくは中長距離選手達)に
先生が「楽に、楽に。」と声をかけた。
私はその声かけが気持ち良かったので、
「『楽に』というのは、あまり聞かないね。良いね。」と声をかけた。       ※1
彼は、ほとんど無意識に声かけしているようだが、
「苦しそうにしていたから。」と答えた。
先生は、タイムを伝えるだけでなく、
生徒達に「いいよ。」とも声をかけていた。
私は何となく嬉しくなったので、
「よく『粘れ!』って声をかけるのがいるけど、好きじゃないんだよね。」
などと言ってみると、
は、「『粘れ!』ですか、、、あまり言わないな~。」と言う。
私は、ますます嬉しくなった。
そんな気分のまま、私は先生と別れた。

(群馬?)で良く目にし、耳にするのは、
指導者による生徒(選手)への叱咤・叱責の声。
中には本当に叱るだけで褒めない(ように見える)人もいる
褒めてやれば良いじゃないかと思う
多くの高校や大学や都道府県対抗などの駅伝の選手が、
指導者の態度や言葉に本気で傷ついている
ことを知っている。
ある女子選手など、高校時代に褒められた記憶が無いので、
練習中大学のコーチに「良いぞ!そのまま!」と声をかけられたら、
可笑しくなってしまったと言う。
選手をけなすことしか言えないコーチがいるとも聞く。
それも、群馬だけでなは無いし、決して少数でもない。

頑張っているのは選手なのだから
苦しみに耐えているのは選手なのだから
普通にできていたら褒めてやれば良いじゃない、
狙いどおりだったら「そうだ!いいぞ!」って褒めてやれば良いじゃない、
少しでも何か良くなっていたら「いいぞ!良くなった!」って
褒めてやれば良いじゃない

本気でそう思う。

1回のトレーニングでは、人は強くならない。
毎日の継続で、何百何千というトレーニングの積み重ねで、人は強くなる

だから、1回のトレーニングは、その1回を考えてやるのではなく、
その月や週での位置づけやコンディショニングの流れ               ※2
前(前日)のトレーニングや次(翌日)のトレーニングとの連鎖の中で
おこない評価するべきもの
だと思う。
楽に!」が大切な場面やトレーニングもある。
しかし、叱責ばかりの指導者には
この「楽に!」が出て来ないようである。」

私が「粘れ!」が嫌いな理由は、                        ※3
1回のトレーニングに結果を求めすぎる声かけに聞こえるとか、
指導者の強制的で自己満足的な言葉に聞こえるとかの他に、
何と言っても遅れるには遅れる理由があるのだから、
ただ前の選手に追いついたり着いていく努力は
結局一過性に終わってしまい、
あまり意味あるものと思えないことが挙げられる。
遅れたい選手などいない。
しかし、粘っても結局は力つき、遅れてしまうのである。


選手に「粘れ!」と言う前に、
その選手に足りないものを見いだし
適切に処方するべきメニューを考えてあげることの方が
よっぽど大切な指導者の仕事だと思うからである。
遅れるのは体力的・技術的に足りないものがあるか、
コンディションに不備があるからで、
どちらにしても「粘り」で解決するものではない。



※1 『楽に』というのは、あまり聞かない

私の主観的な見解だが、
(群馬では?)陸上競技の中長距離の練習では、
指導者の口から「楽に!」という言葉をあまり聞きた記憶がない。
いいよ」とか「いいぞ」も同様。


※2 コンディショニングの流れ

コンディショニングとは広義には、
一過性あるいは短中期的な体調の調整に止まらない、
中長期的なトレーニングによる体格・体型の計画的経変容や筋組成や血液性状の変化、
体力諸要素の向上なども含めた心身の状態の合目的的調整のことだと理解している。
そうしたトータルな心身の状態の変化を
計画的にコントロールしようと努めることが指導計画の基本である。
現実の選手の心身の状態は計画どおりとはいかないことが多いが、
現時点での各選手の状態を把握する力の違いが
指導者の声かけには現れているように感じるのは私だけか?


※3 私は「粘れ!」が嫌い

本番のレースなら粘るべき局面もあるし、
粘ることが結果を多少良くすることがある。
しかし、練習での「粘れ」は一過性の現象しか生まないと思っている。
練習中に他の人が「粘れ!」と呼びかける場面では、
私は「楽に!」「リラックス!」とか、
具体的なアドバイスなら「リズムを取って前腕を楽に(力を抜いて)を振れ!」
とでも言いますかな。



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(この記事は、2011年1月6日に一部修正しました。)

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速く走るには トップスプリンターの条件
前回、伊藤章大阪大学体育学部教授・同大学陸上競技部部長の研究結果と、
川本和久福島大学陸上競技部監督の重要視するポイントの一つから、
短距離を速く走るためには
 ・接地している支持脚の膝の角度を変えない、キック時に膝を伸ばしきらない
 ・骨盤は立てて、前傾させ過ぎない
という2点が重要なことが提示されることを紹介しました。          ※1

ところで、私は、この2点については、
世界陸上第2日(8/16)の感想とスプリント技術について』の後半部分で
指摘していました。

>9秒台の世界でより速く走るポイントは、
>以前のエントリーでは、地面を離れる際の足首が伸び切らないことをあげましたが、
>同時に膝が伸び切らないことも加える必要があります。
>さらに、膝はもっとも後方にある時でも、
>骨盤の直下より後ろにいったら直ちに前に運ばれなければいけません。

もちろん、キックで「膝を伸ばし切らない」ということ、
「足首を伸ばし切らない」というポイントについては、
伊藤章氏はじめ日本陸上競技連盟のバイオメカニクス班による
研究結果の発表(1990年代前半)を参考にしています。
しかし、足首については大学時代(1979~1983)に山西先生によって、
膝についてもカール・ルイスの出現によって気付かされていました。      ※2

骨盤については、直接「立てること」とは書いていませんが、
上の引用文で「(膝を)骨盤の直下より後ろにいったら直ちに前に運」ぶという理由は、
膝は骨盤に対してあまり後ろに行けるほど可動域が大きくないので、
膝が後ろに行き過ぎると骨盤が大腿骨に引っぱられて前傾してしまうからです。
それを避けて骨盤を立てておく事を、大事なポイントとして意識していますので、
川本氏の発言に共鳴したわけです。

  ボルト100mベルリン09#1  ボルト100mベルリン#2  ボルト200mベルリン#1

左の2枚の写真は、今年の世界陸上ベルリン100m決勝のボルトの写真です。
左の写真では、右脚が地面を離れる瞬間にも
膝が伸び切っていない事を表しています。
右膝は最も後ろにある瞬間でも、
骨盤が前傾し過ぎない程度にしか後ろにいっておらず、
上体が真っ直ぐに起きています。
また、左脚のももは高く上がっている事も見て取れます。

真ん中の写真では、地面を蹴った左脚が
素早く身体の下に引きつけられている様子を写しています。
また、接地に向かう右脚の足首を視ると、
直角に近い角度で下りてきている事がわかります。
また、骨盤から頭までがほぼ垂直に真っ直ぐ立っている事、
骨盤が前傾しておらず従って腰が反っていない事も注目されます。

右の写真は、同じく世界陸上ベルリンでの写真ですが、
これだけは200m決勝の直線に入ってからのものです。
ここで、驚くべきは右脚が接地直前だというのに
左脚の膝がすでに身体の真下から前方に引き出されつつある事です。
しかも、左膝は深くたたまれ、
左足の踵は(お尻よりも下方の)左脚ハムストリングの付け根付近に位置しています。
接地の時点では、左膝は骨盤の前にまで移動し、
左膝は伸び始めているでしょう。
(真ん中の写真、1レーンの選手の接地直後の姿と比較して下さい。)
このことが、接地時間の短縮、右脚キック時の左膝の高い前方への突き出しを
可能にするのだと思われます。

前掲の『世界陸上第2日(8/16)の感想とスプリント技術について』で

>この接地する側の脚と、身体の前に運ばれてくる反対の脚の膝とが
>身体の重心のラインよりも前で交差するのが、動きのタイミングとしては良いのです。

とか、
全速力と全力は違う! 世界陸上ベルリン2009』の注(※2)で
「脚を身体の前で捌く」とか書いたのは、こういう動きの事だったのです。

こうした世界トップスプリンターの傾向はカール・ルイス以来続いています。


※1 短距離を速く走るための2つのポイント

伊藤章氏は、
「速く走るために、腿を高く上げる必要はない」という意味のポイントも上げていたが、
速く走るにはももを高く上げる方が有利であるという私の個人的な見解から、
本文ではポイントからは外した。


※2 山西先生とカール・ルイス

陸上競技人 山西哲郎先生 3(恩師 山西哲郎先生 その6)』を参照のこと。


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プロフィール

フィジカル系職人

Author:フィジカル系職人
職業:マッサージ・鍼治療院経営
   アスレティックトレーナー
生息地:群馬
本名:佐藤 暢彦

身体のこと、治療のこと、スポーツのこと、などなど。日頃考えていること、興味を持っていることについて、書いていきたいと思います。

このブログについて:更新作業は治療室内のMacで行なっていますので、早朝や深夜、休業日の木曜に更新されることは基本的にありません。



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