感覚派アスレティックトレーナー  身体と会話する日々
マッサージ師、鍼師であり、アスレティックトレーナーでもあるフィジカル系職人が、身体について、スポーツについて、その他よしなし事について綴る、教養系?ブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

漫画『フットボールネーション』の中のインナーマッスル 3
漫画『フットボールネーション』の中での
インナーマッスルの取り上げ方をいろいろと批判してきました。
今回が、その最後です。


フットボールネーション』では、主人公の対戦チームの選手が
体幹を鍛えた」と自慢げに話すシーンがあり、
その現れとして見事に割れて盛り上がった腹筋をしています。
ところが、この漫画では腹筋をアウターマッスルと分類し、
そのトレーニングがパフォーマンスに役立たないと言う風に描かれています。

ここで、私は戸惑ってしまいました。
体幹を鍛えることは良い!
体幹が安定し、自由にコントロールできるようになると、
ボディ・バランスが向上し、
上肢・下肢の動きもコントロールしやすくなり、
スポーツ場面でのパワー発揮が容易になるからです。
ただし、前にも書いたように
腹筋と言っても深部腹筋腹横筋)を鍛えることなしでは                ※1
体幹を鍛えたことにはなりません。
その意味では、この漫画で盛り上がった腹直筋を見せて、
それが(期待ほどには)役に立っていないと言う描写は正しいでしょう。

しかし、この漫画では、腹筋すべてをアウターマッスルだとしていて、
体幹の意味するものを掘り下げていないから、
体幹トレーニングは役に立たない」と誤解されてしまいます。
このように、片手落ちの表現だったので戸惑いましたし、
そのような誤解を招く描き方は我慢できません。

この漫画では、世界サッカー先進国では
アウターマッスルではなくインナーマッスルを鍛えているとして、
その例としてスペインを挙げています。
しかし、世界の一流プレーヤーの裸体をみれば、
この漫画で言うアウターマッスルである大胸筋や広背筋、
腹直筋、内・外腹斜筋、大腿四頭筋などが発達しています。
ウエイトリフターや格闘家や体操選手、ラグビーのフォワード、
陸上や水泳のスプリンターと比べるのでなければ。
要は、何度も言いますが、
インナーマッスル”や体幹の深部の筋を、
アウターマッスルと共に鍛えているだけです。
その意味では
Core stabilityコア・スタビリティ=体幹部の安定性)を重視したトレーニングや
身体各部のコーディネーションを重視したトレーニングが
取り入れらるようになったと言えるでしょう。
それを、インナーマッスルのトレーニングと呼ぶのは、
適切とは思えません。

スペインの代表的なディフェンダー、バルセロナFCプジョル選手は、
バルセロナFC入団前に所属していたクラブで、
重量物(鉄製の器具など)を用いた
一種のウエイト・トレーニングで徹底的に鍛えられていたことが
以前NHKのテレビで紹介されました。
日本で言う中学生~高校1、2年生くらいのことだったと記憶しています。
プジョルは、そのトレーニングの成果が
バルセロナFCへ入団でき,
その後トップチームへ昇格した大きな要因だったと回想していました。
こうした重量物=一種のフリーウエイトを使ったトレーニングは、
適切に行えば”インナーマッスル”も”アウターマッスル”も
そして何よりもコア・スタビリティが鍛えられると考えるが、
この漫画的な発想で言えば
アウターマッスル”を鍛えて一流になった選手がスペイン代表にいることからも
この漫画での説明がスペインの現状の正しい認識に立っていないことがわかる。


今回を含む3回のエントリーで、
漫画フットボールネーション』の内容を批判してきたました。
サッカーに限らずスポーツのパフォーマンスに結びつくトレーニング、
よりヒトの身体運動のパフォーマンス向上に役立つトレーニングとして、
今までのトレー二ングのあり方が見直されてきたことは確かでしょう。
その見直しが行き過ぎたものになって、
従来型の(特に)ウエイト・トレーニングレジスタンス・トレーニング)の全否定や、
インナーマッスル”万能主義みたいな主張になることに、
「それは誤解である。」と修正を求めたいというのが、
この漫画の内容に対する私の批判の真に意図することです。
そもそも、日本のスポーツ界にあって、
本格的にウエイト・トレーニングレジスタンス・トレーニング)が導入されたのも、
そう昔のことではありませんでした。
サッカーにおいても、
Jリーグが始まってから本格的な導入が勧められたのではないでしょうか?        ※2
トレーニングの効果や限界と
トレーニングとスポーツパフォーマンスの関係について、
短絡的な見方をしないでより妥当性のある情報を集めて
総合的な理解をして欲しいと思います。

ちなみに、この漫画は、
身体科学総合研究所高岡英夫氏の協力を得て
描かれているようです。
高岡英夫氏はゆる体操を考案したことで有名で、
私もその点は非常に優れた業績だと思いますが、
この方の運動理論、身体理論というものは
どうにも”怪しい”というか”眉唾”だと感じています。
特に、20年くらい前には身体科学研究所を主催し、
トレーニング・ジャーナル誌にもよく紹介されていましたが、
この方の理論は”科学の枠組み”には入らないものでしたので、              ※3
それなのに自分の研究所(?)の名前に”科学”を冠するのが納得できません。

フットボールネーション』および作者の大武ユキ氏は、
高岡英夫氏離れをした方が良いのではないかと思います。


※1 深部腹筋腹横筋)を鍛える

深部腹筋腹横筋)を鍛えるを鍛えると書いたが、
腹横筋だけを使う運動やトレーニングはあまり考えられない。
呼吸筋なので息を吐く時にお腹を引っ込めながら吐くと、
腹横筋が収縮していることになる。
トレーニングを積んで慣れないと、
意外にお腹を引っこめながら息を吐く(腹横筋を収縮させる)のは難しい。
それなので、鍛えるという以上に、
「意識できる」「意識して使えるようになる」という言い方もできる。

大事なことは、腹横筋に代表される体幹深部の筋を、
身体を使ういろいろな運動の中で
他の筋と協応させながら働かせる感覚を掴み、
あらゆる運動の中で活かせることである。
ピラティスの6つの原則のうちの
Centre/Core とか Control/Co-ordination とかが
これに当てはまるであろう。

ところで、腹横筋を使ってお腹を引っ込めて息を吐くと言うのは、
ドローイン』という方法と同じかも知れない。
もっとも、私はドローインを教わったことがないので
うかつなことは書けないが。
私の場合、この呼吸法(お腹の動き)をやると
両方の鼠径部の少し上辺りが鈍く痛む。
私の硬い腸腰筋が圧迫されているか、
伸ばされているかしているのだという気がする。


※2 ウエイト・トレーニングはJリーグが始まってから本格的に導入された?

私は、93年の夏頃、JFL時代の京都パープルサンガの数人の選手が、
マシーンでのウエイト・トレーニングをしているのをみたが、
いい加減なやり方であった。
95年春~夏には
読売SC読売ヴェルディ)(当時/現東京ヴェルディ1969)のクラブハウスで、
また、96年の宮崎では
横浜マリノス(当時/現横浜Fマリノス)のキャンプで、
トップチームの選手達がウエイト・トレーニング(マシーン)を
している様子を幾度も見たが、
まだまだ選手自身がやり方を理解していない面が
多々あるように感じた。


※3 科学の枠組み”には入らない

私自身、高岡英夫氏の書いたものを
あまり読んではいないのだが、
スポーツ科学スポーツ心理学などの既存の研究者と共通する用語を使わず、
まったく新しい用語や概念を創出し、それに基づいて論述している。
従来の概念や用語が当てはまらない、あるいは適当でないなら、
そのことを論述した上で新しい概念や用語を提唱すべきであるし、
その新しい概念が良いと認められれば、
追随する研究者が現れ、活気のある研究分野あるいは
研究領域が形成されるはずである。
しかし、私のつたない知識では、そうした動きはみられないし、
高岡氏自身が
学会や研究誌等で論文発表等、
一般的には(科)学者なら行う研究行動は見られないようだ。

トレーニング・ジャーナル誌上では、
新幹線内で呼吸法の鍛錬をしていたら、
10回ほどの呼吸しかしないうちに新横浜から名古屋に着いていたとか、
生まれてはじめてのスキーでウエデルンまでできたとか、
ちょっと荒唐無稽とさえ言えそうなエピソードを語っていたので、
ますます”いかがわしさ”を感じさせられる。

また、近年ディレクト・システムなる理論(?)を提唱し、
一流アスリートの動きを解説しているが、
この理論がまた理解不能な独自の体系で構築し、
通常のスポーツ科学バイオメカニクススポーツ心理学運動生理学、etc)を
学んでもいっさい理解できないと思われる。

女子マラソン世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ
男子陸上100m、200m世界記録保持者のウサイン・ボルトの走りを
”トカゲ走り”と呼んでいるが、
爬虫類のトカゲと人間(哺乳類以降)では骨格構造が違う。
トカゲがクネクネ動くのは、四肢が体の側面に張り出している所為だし、
太く長いシッポの所為だ。
人間でも走る時、脊柱が横方向にたわみ、
骨盤や肩が左右で互い違いに上がり下がりするのは確かだが、
爬虫類ほどではないし、その揺れが大きい方が有利などとは言えない。
まして、大殿筋ハムストリングが(多分弱く)上手く使えないラドクリフは、
体幹の前後運動を利用して推進力の助けにしていると思われるので、
大殿筋ハムストリングの強い推進力を利用でき
大腿の腱やアキレス腱の弾性力を利用するボルト
同じ走法にくくるのはバイオメカニクス的には無理であろう。



↓この記事に共感したり役立つと思った方は、クリックにご協力ください

スポンサーサイト

テーマ:スポーツ科学・トレーニング科学 - ジャンル:スポーツ



FC2カウンター



プロフィール

フィジカル系職人

Author:フィジカル系職人
職業:マッサージ・鍼治療院経営
   アスレティックトレーナー
生息地:群馬
本名:佐藤 暢彦

身体のこと、治療のこと、スポーツのこと、などなど。日頃考えていること、興味を持っていることについて、書いていきたいと思います。

このブログについて:更新作業は治療室内のMacで行なっていますので、早朝や深夜、休業日の木曜に更新されることは基本的にありません。



最新記事



最新コメント



最新トラックバック



月別アーカイブ



カテゴリ



FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking



検索フォーム



RSSリンクの表示



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QRコード





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。