感覚派アスレティックトレーナー  身体と会話する日々
マッサージ師、鍼師であり、アスレティックトレーナーでもあるフィジカル系職人が、身体について、スポーツについて、その他よしなし事について綴る、教養系?ブログ
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漫画『フットボールネーション』の中のインナーマッスルって?
小学館の漫画誌「ビッグコミック・スペリオール」に連載中の
フットボールネーション』を、3話ぐらい立ち読みしました。
昨年の12月に連載が始まったばかりのようですが、
そこそこ好評のようです。
作者の大武ユキさんは、
他にもサッカーをテーマにした漫画を描いたことがあって、
一部のファンには評判だったようですし、
サッカー漫画としては、面白そうだと感じました。

しかし、先々週に発売された号では、
インナーマッスルを鍛える(使う)のがよく、
アウターマッスルを鍛える(使う?)ことは悪いといった内容が描かれていました。
どうも、科学的なことを言っている、
あるいは最新のすすんだトレーニング理論を言っているように
勘違いする人が出るんじゃないかと心配になりました。
この号で主人公のチームの監督が言っていた理論?(主張)は
おかしなところがたくさんあります


大体において、『インナーマッスルアウターマッスル)』って言葉は、
学術用語ではないと思います。
意味や内容が定義がされていない用語です。
かと言って一般化されて多くの人に共通認識されている言葉でもありません

私が初めて『インナーマッスルアウターマッスル)』という言葉を知ったのは、
プロ野球近鉄バッファローズ(当時)のコンディショニングコーチ立花竜司氏が
1992年頃にテレビ番組(プロ野球ニュースだったかな?)で使ったのを聞いたからで、
世間(スポーツ界)的にもにこの頃から広まったのだと思います。
立花コーチは、肩のインナーマッスルとして説明していたのですが、
これは主として
ローテーターカフ(肩)回旋筋腱板』のことを指し、      ※1
肩のアウターマッスルとは三角筋大胸筋広背筋などの
腕(上肢)の運動を司る大きな筋であったと思います。

ローテーターカフは、
肩甲上腕関節において重要な働きをしていて、
上腕骨の運動を補助して円滑にする働きをしています
大きく力のある三角筋大胸筋広背筋などは、
腕(上肢)を動かして大きなパワーを発揮させることができますが、
それもローテーターカフが上肢の運動の中心を関節内に固定してくれて
はじめて可能になるのです。
一方、ローテーターカフのみでは、
腕(上肢)を動かせる範囲が極めて小さくなり、
しかも大きな力を出すことや速い動きをさせることができません。
このように、肩においては、ローテーターカフインナーマッスル)と
三角筋大胸筋広背筋などの腕(上肢)の運動を司る大きな筋(アウターマッスル)は、
同じ腕(上肢)の運動で共同し補完し合って働く間柄で、
お互いが欠くべからざるパートナー同士
なのです。
通常のスポーツ動作における肩の運動(肩を軸として腕が動く運動)では
両方の筋群が必ず一緒に働くのですから、
どちらの方が大切だとか言うべきものではありません


同じ肩の運動に関わる筋でもそれぞれ役割や適したトレーニングが違うので、
説明したり理解してもらったりしやすくするためにわかり易い用語法として、
立花氏がより深部にある筋群であるローテーターカフインナーマッスル
より体表に近い浅部にある三角筋大胸筋広背筋などをアウターマッスル
と呼んで区別したのだと、私は理解しています。                    ※2
そしてその考え方を身体の他の部位に援用すれば、
股関節(下肢)の運動に関わる筋群についても
インナーマッスルアウターマッスルに区分することが可能になります。
本来身体を移動させる為の器官である上肢と下肢の運動の軸となる関節なので、      ※3
肩と股関節は共通点が多いのですが、
体幹部や頸部の筋には肩や股関節のインナーマッスルアウターマッスルのような
筋群の組み合わせがあると言えるのでしょうか? 
どうもありそうではありません。

このように、
インナーマッスルアウターマッスルという言葉そのものが曖昧な言葉で
人によって言っていることが違うと言うことに気をつけなければいけません。

この漫画では、インナーマッスル腸腰筋をあげていることは、
股関節の筋であるし、その働きを考えると
そういう言い方をしてもいいかとは思います。
しかし、それならば肩のローテーターカフ
股関節(臀部)の深層外旋六筋を挙げるべきです。                   ※4
また、横隔膜は全く範疇が違う気がするし、
ハムストリングを入れていることは全く理解できません。

ハムストリングは、下肢の筋(大腿後部)ですが、
これが深部か浅部かで言えば深層から浅層まであるのでどちらとも言えず、
それなら上記の漫画でアウターマッスルに挙げていた大腿四頭筋と同じことで、
両者をインナーアウターに分ける機能上の違いが何なのかが
明らかではないし、
もしも両者に機能上の違いがあったとして
その違いは他の関節や部位において筋をインナーアウターに分けた違いと
同じなのであろうか?
私に言わせれば、
ローテーターカフ三角筋大胸筋広背筋の違いと、
ハムストリング大腿四頭筋の違いは全く別のものです。

漫画中で、
体重が重くもなくがっしりとした体格でもないのに当りに強くなった、
雨の中でもスリップしにくいなどの
体軸がしっかりととれることとか
ボディ・バランスが良くなったことに起因すると思われるシーンを描き、
それらがインナーマッスルを鍛えたからとしていますが、
体幹骨盤を含む胴体)の深部にある筋を上手く利用できるようになったことと
肩や股関節におけるインナーマッスルの働きとを混同しているようです。
何度も言いますが、
深部にあるからと言って(本来肩関節限定で使われた)インナーマッスル
同じグループに分類できると考えることは間違いです。

骨盤を含む)体幹の深部の筋は直接関節運動には関わっていません
しかし、それらの筋を上手く使うと体軸が安定し姿勢がよくなり
股関節や肩関節などの大きな力やパワーを効率よく使えるようになると
考えられているのです。                               ※5
肩や股関節などのインナーマッスルは、
直接関節運動に関わる(必要な)筋です

しかし、それらの筋によって直接姿勢がよくなり体軸が安定するとは
少なくとも今のところは言えません


次回に、いわゆるアウターマッスルの強化の否定について
批判してみたいと思います。


※1 ローテーターカフ回旋筋腱板

ローテーターカフを筋群そのものの名前として扱うべきではなく、
ローテーターカフとか、回旋筋腱板腱板などと書くべきかもしれないが、
本文では煩雑さを避けるために単にローテーターカフとした。
ローテーターカフという用語については、
エントリー『中殿筋・梨状筋 2(腰痛に対するマッサージ)』の注(※3)
で説明している。


※2 立花氏がインナーマッスルアウターマッスルと呼んで区別した

要するに立花氏が考案した呼び方ではないかということ。
インナーマッスルアウターマッスルと言う用語は英語ではないだろう。
英語版のwikipediaで検索しても該当するものはない。
googleでの検索でも、英語のサイトに該当する記述は見当たらない。
もちろん学術用語でもなんでもないだろう。


※3 本来身体を移動させる為の器官である上肢と下肢

「下肢はわかるが、上肢は違うだろう。」と思うかもしれないが、
人間の身体は遠い祖先である四つ足動物を元にしてできている。
つまり、本来上肢は前脚だったので、表記のように書いた。
まだ二本脚で立てない赤ちゃんはまずハイハイから始めるが、
見事な四つ足歩行を見せてくれるのはその名残であろう。


※4 深層外旋六筋

※1でリンクを貼っておいたエントリー
『中殿筋・梨状筋 2(腰痛に対するマッサージ)』に説明がある。


※5 体幹骨盤の深部の筋は~と考えられている

私が推奨しているピラティスPilates)では、
深部腹筋(腹横筋)や骨盤底筋(群)をコントロールすることを重視する。
特に腹直筋を使わないようにしながら腹筋を働かせるが、
背中の方にお腹を引っ込めさせながら腹筋を使うことで
腹横筋の活動が高くなる。
骨盤底とは、文字通り骨盤の底にある筋の総称であるが、
主なものには骨盤隔膜肛門挙筋尾骨筋)や会陰横筋・尿道括約筋などで、
骨盤内臓器を支えている。


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テーマ:スポーツ科学・トレーニング科学 - ジャンル:スポーツ

この記事に対するコメント

呼吸筋以外の筋を付けすぎると硬くなりやすいですよ。
あとあなたは決定的に間違った解釈をしています。

インナーを鍛えるって誰が筋肉をと言いましたか?
インナーの’意識を’鍛えるじゃないんですか?

分かりやすいように言い換えましょう。
意識しやすい筋肉を付ければ、
意識しずらい筋肉はその存在感にやられて使わなくなる。
この漫画ではどこに筋肉を付けるかではなく、
どう身体を使うか、それによってどこに筋肉が付くか。
これが大事。言葉遊びはいらない。
批判するならもっと深いところを批判しましょう。
例えば「この絵だと主人公はハムス使えてないぞ」とか。
私も本業だから分かります。
あなたも分かるよね?
【2011/04/14 01:06】 URL | #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> 呼吸筋以外の筋を付けすぎると硬くなりやすいですよ。

呼吸筋以外とは、本当に呼吸筋以外すべての筋について言っていますか?
また、そのように言い切れるのは、どのような理由ででしょうか?
(もっとも「付けすぎると」というのはどこまで付けたら付け過ぎなのか不明です。)
相撲取り、柔道やレスリングの選手、体操選手は硬いですか?

> あとあなたは決定的に間違った解釈をしています。
>
> インナーを鍛えるって誰が筋肉をと言いましたか?
> インナーの’意識を’鍛えるじゃないんですか?

えーと、筋ではなく意識を鍛えると、あの漫画で言っていましたか?

あの漫画でインナーマッスルとして取り上げられてた筋は、
すべてが本当にインナーマッスルなのですか?
それなら、インナーマッスルとはどういう筋の事なのか定義して下さい。
あの漫画のいうインナーマッスルには、どんな共通点があるのですか?
解剖学的、生理学的、バイオメカニクス的な説明ができますか?
ハムストリングが何でインナーマッスルなのですか?

もっとも、意識する事の重要性を否定するつもりはありません。


> 言葉遊びはいらない。

言葉を使って説明しています。
言葉遊びではなく、できるだけ言葉を厳密に使って解説を試みました。
過去~今まで、言葉遊びをしてきたのが高岡英夫氏です。


> 分かりやすいように言い換えましょう。
> 意識しやすい筋肉を付ければ、
> 意識しずらい筋肉はその存在感にやられて使わなくなる。

言い切るところが凄いです。

> 批判するならもっと深いところを批判しましょう。

私の書いたものを理解いただけているのでしょうか?
(3回に渡って書いている。)
「もっと深いところ」とはどういう意味なのでしょうか?
私にはわかりません。


> 例えば「この絵だと主人公はハムス使えてないぞ」とか。
> 私も本業だから分かります。
> あなたも分かるよね?

漫画にそこまで期待する事はできません。
また、あなたの”本業”って何ですか?
名乗りもせず、どのような学を収めたか、
あるいはどのような職についているのかもわからない人から、
「あなたもわかるよね?」って、何を言っているのか意味不明です。

高岡英夫氏はいい加減です。
私は、井原正巳、秋田豊、伊東輝悦、平野 孝、望月重良など
何人かのサッカー日本代表(当時)のマッサージをしたことがあります。
まあ、彼らは日本人だから高岡氏の言う一流ではないのかも知れないが、
みんな筋肉が柔らかいと言うわけではなかった。
サッカーではないが、陸上競技なら
世界の一流短距離選手を何人もマッサージした事があります。
当然疲労の所為もあるでしょうが、
彼らは皆筋肉が硬く張っていました。
彼ら一流スプリンターは、
サッカー選手以上にハムストリングが発達しています。
つまりハムストリングを使って走っているのに。
(運動生理学やスポーツバイオメカニクスの研究から明らか)

それから、人は止まっている状態から走り出す時は、
どうしても最初の5歩くらい(スタートダッシュ)は
大腿四頭筋の方がハムストリングよりも加速に貢献しています。
つまり大腿四頭筋主体で走りっています。
スプリンターでも、それ以上の歩数からハムストリング主体で走ります。
(『陸上競技研究』誌に」掲載された論文からの知識)

高岡氏には、そんな事もわかっていないであろう。
【2011/04/14 18:55】 URL | フィジカル系職人(管理人) #- [ 編集]

素朴な疑問として
鍼治療って科学に基づくものなのでしょうか?
それから、あなたは学術論文を書かれた経験がおありですか?
より高い位置から批判をされているのか、さほど変わらない場所で批判をされているのか、単にそれが知りたいだけです。そのいずれかによって、あなたの批判自身の捉え方も変わって来ますから。
【2013/07/03 00:27】 URL | 通りすがりの一研究者 #mQop/nM. [ 編集]

Re: 素朴な疑問として
> 鍼治療って科学に基づくものなのでしょうか?

あなたにコメントを頂いた記事では、鍼治療については言及していませんので、論じている問題とは関係ないのではないかと思いますが。
ちなみに、鍼治療が科学に基づいている、少なくともすべて科学的知見に従って行なわれているかといえば、違うと認識しています。まず、治療法ができ、それを科学的に説明できるのかどうか、一部研究中で、多くは研究を待っている状態かと思います。
それは、現実に一部の”医療”行為や多くの代替療法に、共通して言えることではないでしょうか。

> それから、あなたは学術論文を書かれた経験がおありですか?

いいえ。
しかし、運動生理学、バイオメカニクス、運動学などに関わる学会・研究会に参加し、それらの分野の論文をそれなりの数(何十編あるいは百を超えているかもしれませんが)読んできて、それなりに理解できるくらいは、トレーニングされています。

> より高い位置から批判をされているのか、さほど変わらない場所で批判をされているのか、単にそれが知りたいだけです。そのいずれかによって、あなたの批判自身の捉え方も変わって来ますから。

「より高い位置」という考え方があるとは、知りませんでした。私が主に批判している高岡英夫氏は、学位をお持ちですから、より高い位置にいるのでしょうか? ただし、あの方が学位を取ったのは、運動生理学、バイオメカニクス、運動学などでは無かったのでは?
そんな観点で判断されるよりも、あなたが何の分野の研究者かは知りませんが、私が記事で述べた問題点を、客観的に判断されたら良いのではないでしょうか?
「インナーマッスル」「アウターマッスル」などの概念が、学術的に定義の一致を見ているものなのかどうか?
私の知る限り、そのような定義がされた事実を知りません。また、もしもそのような定義が為されているとしても、「フットボールネーション」で図示された筋肉の分類が、その定義と合致した適切なものなのかどうかも疑問です。横隔膜と腸腰筋とハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)を,同じ仲間として分類でき、大腿四頭筋をもう一つのグループに分類できる概念(定義)というものがあれば、私としても知りたいところです。
通りすがりの一研究者さんは、如何お考えでしょうか?
【2013/07/04 01:26】 URL | フィジカル系職人 #- [ 編集]

承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
【2014/10/14 12:03】 | # [ 編集]

Re: タイトルなし
> inner muscleが学術用語でないといいますがgoogle scholarで検索しただけでもたくさん論文がでてきますが。
> 学術用語でないという根拠はなんでしょう?

最近のことはしりませんが、では、どのような学問領域で、どのように定義されているのでしょうか?
【2014/10/18 02:17】 URL | フィジカル系職人 #- [ 編集]


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Author:フィジカル系職人
職業:マッサージ・鍼治療院経営
   アスレティックトレーナー
生息地:群馬
本名:佐藤 暢彦

身体のこと、治療のこと、スポーツのこと、などなど。日頃考えていること、興味を持っていることについて、書いていきたいと思います。

このブログについて:更新作業は治療室内のMacで行なっていますので、早朝や深夜、休業日の木曜に更新されることは基本的にありません。



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