感覚派アスレティックトレーナー  身体と会話する日々
マッサージ師、鍼師であり、アスレティックトレーナーでもあるフィジカル系職人が、身体について、スポーツについて、その他よしなし事について綴る、教養系?ブログ
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漫画『フットボールネーション』の中のインナーマッスル 2
前回、漫画誌「ビッグコミック・スペリオール」に連載中の
フットボールネーション』の中で描かれていたインナーマッスル
アウターマッスルについての説明がおかしいと書きました。

インナーマッスルという言葉は、
定義がはっきりしていないわけのわからない言葉であるということ。
(スポーツ科学で通用する言葉じゃありません。)                   ※1
元々肩の運動をつかさどる筋群を役割の違いによって分けた
インナーマッスルアウターマッスルと言う語を、
股関節を除けば他の身体の部位の筋に当てはめることは適切でないこと。
この漫画でインナーマッスルアウターマッスルの例として
具体的な筋が挙げられているが、
役割を考えた場合抜け落ちている筋や不適当な筋が含まれていること。
体軸の操作やバランスなどの
サッカーのパフォーマンスに影響する要素の向上の理由を、
インナーマッスル(この漫画で挙げていた筋)を
鍛えた(使えている)からとしているが、
それはむしろ体幹(特に)深部の筋群の働きで為されること。
(少なくともそれらの筋への言及がなければおかしい。)
以上のようなことを指摘しました。

今回は、まず予告しておいたように、
アウターマッスルの強化を否定していることを、
ここでは逆に批判してみたいと思います。


前回、インナーマッスル
アウターマッスル股関節に限定すべきと書きましたが、
関節運動(肩・股関節)においては両者はどちらも必要で、
相補的に働いているとも説明しました。
そのため、例えばベンチ・プレススクワットといった
最近アウターマッスルのトレーニングの
代表格のように認識されているトレーニングでも、
インナーマッスルアウターマッスルの両方の筋群が働き、
鍛えられていると言う事実を指摘しておきましょう。

正確かつ適切なスピードの動きで、
(目的に応じた)適正な重量×反復回数で、
適正なインタバル(休憩時間)とセット数で、
そして適切な頻度(何日に1回やるのか?/週何回やるのか?)で行った時、
アウターマッスルに偏ったトレーニングだなどと何故思えるのでしょうか?
こうした批判をする人間は、
まともなウエイト・トレーニング(フリーウエイト)を
教わったことも実際にやったことも無いのでしょう。

このことは、逆に考えて、
アウターマッスルが発達している人間は、
アウターマッスルばかり鍛えてインナーマッスルが上手く使えない
という偏見の裏返しでもあるでしょう。
アウターマッスルを適切に鍛えるということは、
同時にインナーマッスルを上手く使って鍛えることでもあります。            ※2

また、アウターマッスルのトレーニングを、
特にその代表的なものとして
ウエイト・トレーニングを行うと、
筋が硬くなって柔軟性が失われるという
迷信
が未だにあるのは驚きです。
筋が硬くなるのは不適切なトレーニングをした場合ならあり得ます。
しかし、トレーナーとして多くのアスリートを観てきて、
筋が硬くなった原因を考察した場合、
サッカーであればトレーニング内容としては走トレーニングと
実戦形式のトレーニング(戦術トレーニング、ミニゲーム、紅白戦、etc)が
一番原因として多いのではないかという個人的な見解を持っています。
だからこそ、そうしたトレーニングの後には、
ジョッギングや水泳、バイク漕ぎなどの有酸素運動をたっぷりとやり、
体操やレジスタント・トレーニングストレッチングを行ない、
場合によって筋や関節のケアまでやることが望ましいのです。
適切なウエイト・トレーニングなどのレジスタンス・トレーニング
筋が硬くなることはありません!                           ※3

今までに書いたようなインナーマッスルアウターマッスルの関係への誤解、
アウターマッスルを鍛えるとされる従来型のトレーニングへの偏った認識は、
体操選手を観れば簡単に気づくことです。

筋骨隆々とした”アウターマッスル”の発達がみられるのに、
体操選手は大変に身体が柔軟です。
それは柔軟性を高めるストレッチングなどを大変重視して
毎日入念に取り組んでいるからです。
アウターマッスル”が発達しても、
柔軟性を上げる/保つことが可能なことがわかるはずです。
体操選手は筋骨隆々としていますが、
体軸のコントロールが大変巧みで、ボディ・バランスも素晴らしくいいです。
それらの能力が”インナーマッスル”のお陰なのだとしたら、
筋骨隆々とした”アウターマッスル”を作り上げるトレーニングと
インナーマッスル”を鍛え上げるトレーニングとが、
少なくとも両立すると言うことになります。

体操選手が普通ウエイト・トレーニングをするのか
しないのかは知りませんが、
体操選手の主要なトレーニングの中には
アウターマッスル”と”インナーマッスル”の両方が
同時に鍛えられるものがあることは確かでしょう。
体操競技には、そのような要素があります。
フリーウエイトでのウエイト・トレーニング
ある種のレジスタンス・トレーニングにも、
同じ要素があります。
アウターマッスル”のトレーニング、”インナーマッスル”のトレーニングと、
相反するもののように考えるのは間違いです。


※1 インナーマッスルは定義がはっきりしていない

このサイトでの説明が割合に妥当だと思う。
(『インナーマッスル Training』)
ただし、インナーマッスル
「主に姿勢を細かく調節したり、
関節の位置を正常に保ったりするという働きをしています」
と言う説明が正しいかというと疑問。
それならば、抗重力筋はすべてインナーマッスルか?
ローテーターカフは姿勢の調節をしている言えるのか?
そもそも関節の位置を正常に保つとは
どのような意味で使われているのかが不明。

私はインナーマッスルという語を
全身一般的な用語に使うことには反対で、
肩など限定的に使うことだけを容認すると言う考え方である。
しかし、このサイトの制作者は、
「定義がバラバラ」で「明確に区別する基準」は無い
と言う現状を説明しながらも(同サイト『インナーマッスルとは何か?』)、
あえて「当サイト独自に設定した定義に基づく」と
断わりを入れつつ定義しようと言う
困難(無理?)なことにトライしている姿勢は好感が持てる。


※2 インナーマッスルアウターマッスルと同時に鍛えられる

野球の投手の為のインナーマッスルトレーニングのような
特殊化したトレーニングについては、
投球と言う特殊な動作と野球肩のような障害の多さから
一般論とは別に語るべきである。
煩雑になるので、ここでは
投手用のインナーマッスルトレーニングについては取り上げない。


※3 適切なウエイト・トレーニングやレジスタンス・トレーニングで
  筋が硬くなることは無い

神経–筋の生理学的な知見の中には、
「最大収縮後に、最大弛緩が得られる」という法則がある。
また、シェリントンの継時誘導の原理
筋収縮時の相反抑制などにより、
筋は抵抗運動中に収縮の反応性の高まりとともに、
弛緩の反応性の向上をも得ていく。
継時誘導とは、
「拮抗筋群の最大興奮の直後に動筋がつよく促通される」というもので
簡単に言うとある筋を強く収縮させた直後には
その筋の拮抗筋が強い収縮を起こしやすい状態になるということ。
その他の点は、エントリー『自原抑制と相反抑制について』を参照のこと。

以上のような生理学的理由から、
強い筋収縮を伴うレジスタンス・トレーニング中または直後に
筋は最大の柔軟性を見せさえする。
要は、筋が疲労により正常な収縮ができなくなるまでやらなければ良いと
考えることができる。

一方、筋の微細損傷が筋肥大の要因とする考えと
筋肉痛=筋の微細損傷という考えから、
筋肉痛を起こすくらいのトレーニングをしないと
筋肥大効果がないという(誤った)考え方が広まったことがある。
しかし、痛みを伴うような筋の損傷を起こすことはリスクが大きく、
筋の生理学の権威、東大大学院の石井直方教授によれば、
筋損傷の度重なる修復によって
収縮をしない(力を発生させない)組織、
言わば壁や柱に該当する組織が厚くなって
見せかけの筋肥大が起こることがあるという。
それでは筋の機能(筋力・収縮スピード・柔軟性、etc)は低下しかねない。
そのような誤ったトレーニングの結果を
アウターマッスルのトレーニングや筋肥大の所為にして
ウエイトトレーニングを無意味とするのは誤り
である。


(2011年2月23日、文の一部の表現を書き直しました。)


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(この記事は、2011年1月6日に一部修正しました。)
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Author:フィジカル系職人
職業:マッサージ・鍼治療院経営
   アスレティックトレーナー
生息地:群馬
本名:佐藤 暢彦

身体のこと、治療のこと、スポーツのこと、などなど。日頃考えていること、興味を持っていることについて、書いていきたいと思います。

このブログについて:更新作業は治療室内のMacで行なっていますので、早朝や深夜、休業日の木曜に更新されることは基本的にありません。



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