感覚派アスレティックトレーナー  身体と会話する日々
マッサージ師、鍼師であり、アスレティックトレーナーでもあるフィジカル系職人が、身体について、スポーツについて、その他よしなし事について綴る、教養系?ブログ
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ベアフットランニング リーバーマンの主張は変!? vol.3
ダニエル・E・リーバーマンは、彼の論文
Foot strike patterns and collision forces
in habitually barefoot versus shod runners
"(抄録)で、
靴を履いて走る時と裸足で走る時とでは
足接地パターンが異なる事がある事を示した。
足接地パターンは、
踵が最初に地面に触れる"rearfoot strike"と
前足部が最初に接地する"forefoot strike"と
踵と前足部が同時に接地する"midfoot strike"に分類され、
靴を履いている場合"rearfoot strike"が、
裸足の場合"forefoot strike"が増えると言う事である。

こうした結果には、特に異論はない。
素直に受け入れる。
走るという一見単純な運動は、
骨格などの体型や筋の発達の違いや、
走る地形や走路の硬軟などの外部環境や
履物や荷物の有無などのランナーの受ける条件、
そしてランナーの所属する集団の歴史や文化などの背景によって
大きく影響される。

だから、靴を履いているかどうかという条件は
走るフォームを変え得るだろう。
普段靴を履いている人間が裸足になった時や
普段裸足でいる人間が靴を履いて走らされた時には、
その足接地パターンも大きな影響をうけるだろう。

しかし、走ると言う運動が
このように様々なファクターに影響されるからこそ、
リーバーマンの解釈には賛成できない。
リーバーマンは、この論文(抄録)で、
「ヒトが裸足で走る時、"forefoot strike"や
"midfoot strike"の方がより普通(common)であろう」
と主張しているのだ。
だが、その主張の根拠はこの実験しか無いのだ。
アメリカ人とケニア人だけで実験した結果が
人類全体に言えると言うのだろうか?
モンゴロイドにも同じ事が言えるのであろうか?

この実験に参加したケニア人ランナーは
優秀な長距離ランナーを輩出した地域・部属の者で、                 ※1
しかも試合に出ている本格的アスリートである。
彼らは、シューズを履いても履かなくても"forefoot strike"の割合が高い。     ※2
この事は、彼ら共通の体型が影響している可能性はないのだろうか?
彼らの体型は、明らかに大多数の日本人とは異なっている。

あるいは、起伏の激しい地形で
(日本人からみたら)ハイスピードで走る習慣が、
その走法を作り出している可能性は無いのであろうか?
走スピードが上がると踵接地は難しくなり、
短距離走では"forefoot strike"が普通になる。

彼らの運動文化的な価値観に、
"forefoot strike"を好しとしている可能性はないのであろうか?
日本にも江戸時代には”なんば”などの独自の運動文化があったように。

少なくとも、日本人とケニア人とでは、
自然・生活環境も歴史や文化も異なり、
ケニア人がbarefoot runningでどう走ろうと
日本人にも同じ事が言えるとは思えない。

アメリカ人について言えば、
日本人同様に普通裸足で走ることは全くと言っていい程無いであろう。
しかも、2つのグループのうち1グループの被験者達(1)は            ※3
ハーバード大学に関わる人間達である。
当然、舗装された道路などの固い路面で走る事が多いと予想される。
土や芝生の上を日常的に走れる人間がどれだけいるのであろうか?
靴に慣れ、靴に守られた足を持つアメリカ人が、
固い路面や土の上で裸足で上手く走れるだろうか?
(実験も人工的な路面上を走ってデータを採っている。)

私の過去の経験でも、
アスファルトやコンクリートの上、
硬く締まった土のグラウンドの上では、
裸足で走る時は踵が路面にゴツゴツ当たる感覚が嫌で、
シューズを履いている時よりも足首を背屈させ
踵を身体に近いところに接地することで
ショックの少ない接地を心がけたため小股になった。
人によってどう対処するかに違いはあるだろうが、
現代アメリカ人も現代日本人も、
裸足で走る時は心理的な要素も影響している可能性を
考慮するべきである。

裸足で走る時"forefoot strike"に近づくとしても
だからと言って「(ヒトにとって)普通 common」だとは
簡単に認めることはできない。

人類(ヒト)の足の構造からして、
踵は最初に接地しても安心なように作られている。
少なくとも歩く時は"rearfoot(heel) strike"であるのが普通 commonである。
そして、ヒトの運動としては
歩く事の方が走る事よりも頻度が高いはずである。
それは、太古の昔から変わらないであろう。
それ故、ある程度以上の長さの距離を走る必要が生じた時も、
ヒトの動きとしてはrearfoot(heel) strike"が多く使われたはずである。       ※4
ヒトの踵には、強く太い骨(踵骨)が発達し、
その下には踵骨下脂肪体(しょうこつかしぼうたい)という
クッション様の組織まである。
(あまり、強い衝撃を頻回に受ければ痛めてしまうが。)
このような構造は類人猿にも無いはずである。

こうした、人類の進化の結果手にしたモノを、
リーバーマンは無視するのであろうか?


さて、まだまだ話は続くが、続きは次回に回そう。



※1 ケニア人ランナーは優秀な長距離ランナーを輩出した地域・部属の者

カレンジン Kalenjin 族である。
この部族は、数々の優秀な中長距離ランナーを輩出している事で有名である。


※2 (ケニア人ランナーは)"forefoot strike"の割合が高い

ケニア人のティーンエイジャーを対象としたグループも2つ実験に参加した。
靴を履いた事の無い子達のグループは
"forefoot strike"の割合が高いので、
ケニア人(カレンジン族)は"forefoot strike"で走る割合が高い事は
言えるようだ。
靴を小さい頃から履いている子達のグループは
"rearfoot strike"の割合が高いので、
靴を習慣的に履く事が踵からの接地に動作が導かれている可能性は
あるだろう。
ただし平均15歳のティーンエイジャーなので、
ランニングを本格的に初めて数年経ったとき、
変化する("forefoot strike"が増える)可能性もあるのではないだろうか?
ケニア人(カレンジン族)の事を日本人に安易に敷衍するわけにはいかない。


※3 (アメリカ人被験者達)の2つのグループ

この実験では、習慣的に靴を履いて走っているランナーのグループは、
ハーバード大学の関係者(Harvard University community)である。
もう一グループは、習慣的に裸足で走っているランナーとされているが、
詳しい説明だと裸足に近いフットウェア(例えば Vibram Five Finger®)を
履いて走っている者も含まれている。
このようなフットウェアを履いても、
裸足と同じと言えるのであろうか?


※4 ある程度以上の長さの距離を走る必要が生じた時も、
   rearfoot(heel) strike"が多く使われたはずである。

危険から逃げる時など、短い距離を全速で走る場合は、
速く走れれば走れる者程"forefoot strike"になったはずである。
ヒトは、"forefoot strike"と"rearfoot strike"を
使い分けることもできるのである。



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テーマ:ジョギング・ランニング - ジャンル:スポーツ

この記事に対するコメント

最近、ベアフット・ランニングという物を知って、興味を持ったのですが、
なんか、良いことばかり主張しているので、逆に怪しく感じていたので、
この記事は大変為になりました。

【2012/01/09 20:32】 URL | #- [ 編集]


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Author:フィジカル系職人
職業:マッサージ・鍼治療院経営
   アスレティックトレーナー
生息地:群馬
本名:佐藤 暢彦

身体のこと、治療のこと、スポーツのこと、などなど。日頃考えていること、興味を持っていることについて、書いていきたいと思います。

このブログについて:更新作業は治療室内のMacで行なっていますので、早朝や深夜、休業日の木曜に更新されることは基本的にありません。



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